町長日記2018年6月19日(長生郡町村会の定期総会に出席)
今日は、長生郡町村会の定例会があり、鴨川市の黒潮荘にでかけました。そのまえに、最近話題のチバニアン(市原市)の崖地と、濃溝の滝(亀岩の洞窟・君津市)を見学しました。
チバニアンの崖地は、報道されているとおり、見た目は全く普通の崖です。養老川のきれいな流れに面した崖が、地層の中に入っている磁気帯び物質の粒子の並ぶ向きで、地球の地磁気の向きの反転が起こったことがわかるよい事例だというのです。
海底に泥が沈澱して地層を構成してゆく際に、その中に含まれる磁気帯び物質の粒子は、そのときの地球の地磁気の方向に沿ってきれいに並びます。地磁気の方向の逆転が起こると、あるところを挟んで、この微粒子の並ぶ向きが逆になるのです。チバニアンは、70数万年前の海底であった地層が隆起したもので、磁気帯び物質の並ぶ向きが変化していることが明瞭に観察されるところだそうです。そうした例が世界でも少ないということで、チバニアンという名前とともに、この時代の地磁気変化を示す標準的標本として認められるかもしれない、ということです。これは、先般記したように、里山リレートークに参加した際の知見にもとづくものです。
ただ、申請者と同じ茨城大学の他の先生から、標本としてのデータ収集の在り方などで異論がでており、承認されるかどうかは、まだはっきりしないようです。
いずれにせよ、自治体としては、これを人が集まりお金を使ってくれる拠点として使えるか否かが一番の関心事になってきます。国の天然記念物に指定されたようですが、それだけでは、自治体の経営、地元コミュニティーの活力増強には結びつきません。どうやって来訪者を増やし、お金を使って頂けるかが課題です。チバニアンは、そのもの自体、とくに見た目では、特に人を引き付けるものをもっていません。想像力を相当動員して初めて面白さがわかるというものです。なかなかこれを幅広い人々の継続的関心の対象にするのは、難しいように思います。市原市や関係者の皆様の努力に期待したいと思います。
その後向かった濃溝の滝(亀岩の洞窟)は、君津市の山中にあります。ここは、人工的に掘りぬいた用水回しの洞窟があり、それは亀岩の洞窟といわれていたものです。ここに、年二回だけだそうですが、朝日が差し込むときに、水面に日差しの影が映って、画像を90度傾けてみると、ハートのようにみえる、というものです。込み入った準備をしないと売りがはっきりみてとれぬトンネルです。1年365日のうち2日しか見えない、というわけですから、普通の時にはただの洞窟なのです。こちらは、チバニアンと違って、「亀岩の洞窟」ですでにある程度売り出していたようです。そこですでに人がやってくるしつらえもできていますが、かなりの規模で手入れがなされているので、逆に、集客力がないと、今後が続かなくなる危険性があります。(あとで聞いたところでは、君津市では、ここの整備への現在の規模での投資はむだではないかという議論もあるそうです。)そういう意味では、ここも、もう少し「誰でも」「いつでも」共有できる魅力を見つけてアピールしてゆかなくてはならないでしょう。
翻って、われわれの一宮町でいえば、釣ヶ崎海岸は、今後同じような問題をかかえることになるでしょう。オリンピック開催地という他にないほどの大きな名誉は負うわけですが、オリンピック閉会後は、仮設施設はすべて撤去され、松林に戻すという構想です。残るのは芝生と駐車場から構成される1haの自然公園だけです。モニュメントなどはなにがしか残すにしても、主として現在のような自然な海に戻るわけです。とすれば、来訪者の方が、オリンピックの記憶を辿りなおしながら、楽しめる設備がなくてはなりません。なにもないままでは、来訪者は当初はあるでしょうが、持続しませんし、来訪者の方々による消費活動を通じて、地元経済が回ってゆくという、正しい意味での「レガシー」は確保できません。
そうした点から考えると、やはり多くの町民の方が仰っているとおり、釣ヶ崎至近の場所に、道の駅などの設営が、オリンピック記念の色彩を帯びながら展開できることが、一番望ましいと感じます。そちらの方向を、なんとかして探ってゆきたいと、決意をあらたにする、二カ所の見学でした。