町長日記 平成29年1月23日(九十九里浜侵食問題対策協議会に出席)
九十九里浜侵食問題対策協議会に出席
【午後 九十九里浜侵食問題対策協議会に出席】
午後1時から千葉の「きぼーる」で、九十九里浜侵食対策検討会議に出席しました。これは、九十九里浜全体に、海岸線の後退、砂浜の侵食が生じているという認識をベースに、現状を把握しなおし、将来を予測しつつ、有効な対策を講じてゆくということを目的とするものです。議論の中で、私は、「侵食された砂はどこへいっているのか?九十九里沿岸地域から外へ、たとえば外洋深部などに流れていっているのか?それとも九十九里浜沿岸地域の海域中に滞留しているのか、どうなのか?」について質問しました。
日本大学の宇多高明氏の回答では、「砂は7-8mほどの深さのところに滞留し、深部に流れ込んでいるわけではない」とのことでした。そして、「地面にめり込むように、海底に沈みこんでいるのではないか」とのことでした。そこのメカニズムははっきりわかりませんが、侵食された砂がどこにいっているのかは、もう少し突っ込んで確かめたいところです。それによっても、浸食のメカニズムの解析が進むと考えます。
九十九里の北端の旭市、そして南端の一宮町は、屏風ヶ浦と太東岬の護岸によって、そこから崩落していた土砂の供給がとだえ、それぞれに南下する海流と北上する海流とで、砂浜が侵食され、顕著な被害を出した地域です。そこに建設されたヘッドランドは、汀線の後退を遅くする効果は見られたものの、汀線を前進させ砂浜を回復する効果は見られなかったということでした。
●重点的に養浜を行い、40m幅の砂浜の確保を目指す
今後は、養浜を重点的に行って砂を供給し、各地域での砂浜を40m幅で確保することを目指すということでした。以前、県は130mを目標としていたそうですが、困難とみて、40mに変更したそうです。
基本は、ヘッドランドを作り、海岸線に対して平行の海流をさえぎることで、平行方向の漂砂を少なくし、併せて間に砂を人為的に投入して養浜することで、40mの砂浜を確保してゆくということだそうです。これが今後の養浜作業の基本方針のようです。ともかく大量の土砂を投入することが、砂浜回復にとって一番の有効な手段であるというのが宇多氏の意見でした。
一宮について言えば、ヘッドランドの工事はほぼ済んでいるので、今後は養浜が続けられると捉えて良いようです。なるべく多くの良質の砂を投入してもらうように各種チャンネルを使ってお願いをし続けます。
●地盤沈下と海岸浸食
侵食の深刻度は、地盤沈下によって加速されているということでした。シミュレーションによれば、年1cmの地盤沈下でも、あるとないとでは、侵食に大きな差がでるということが示されました。天然ガスやヨード等、地下資源の採掘・利用は九十九里地域、特に南部の産業として重要ですが、その副産物である地盤沈下については、更にそれを防ぐための手立てが必要だということを痛感しました。東京大学の佐藤教授は、津波被害の問題、防災の視点からも、地盤沈下問題はもっと大きくとらえるべきだ、と仰っておられました。
●チョウセンハマグリの生態
宇田川委員からは、チョウセンハマグリの性質について、教えて頂きました。チョウセンハマグリは、粘土(シルト)に弱いこと、流れなどには強く、移動能力も高いこと、海岸はそもそも環境が不安定なのでかなり適応力があること、など、興味深いことを語られました。横芝光町の佐藤町長のお話では、最近チョウセンハマグリがよくとれて、一千万円売り上げている人もある、ということでした。すごい大漁です。
●施策の副作用も見据え、誠実に合意形成を
その他、私が発言したことは、「海岸関係者の合意形成を経て進む」という基本方針について、それは全く正しいが、たとえば離岸堤は、消波効果は大きく、砂浜保全には有効だが、たとえば地引網はやりにくくなるし、サーフィンに必要な波もなくなる。またヘッドランドは、強い離岸流が生じて海水浴に不適となる、といった、それぞれの施策の有効性と副作用、それが各活動に及ぼす正負の作用を正面から見据えて、その副作用を出来る限り回避する形で、誠実に合意を作っていかないと、後で後遺症が残ってよくない展開になるだろう、ということを述べました。砂浜の回復は共通の目標ですが、それを前提にしながら、漁業・海水浴・サーフィン・自然保護など各種の活動のニーズを整合的に統合してゆかなければならないわけです。誠実に、正直に、事態を真正面から見据えて議論することを基本方針とすべきだと考えました。
最後に、宇多さんが、最終的には、諸外国で見られるように、海岸線に近い部分を放棄してセットバックするのもひとつのあるべき対応である、といっておられました。現実には利害が関わってきますので難しいのですが、万策つきた際は、それも選択肢となることは間違いないでしょう。