町長日記 7月14日(町長と町づくりを語る会)
中学校で「町長と町づくりを語る会」を開催しました。中学校に私が出向き、中学生の諸君と、町づくりについて話し合うというもので、学校行事の一環として行われています。
私が訪れるには、二つの目的があります。一つは、「政治」というもの「ルールの設定や運営、予算の配分決定などの権限を行使する政治」というものが、中学生の諸君にとっても、非常に身近な重要なものであることをわかってほしいということです。将来、有権者として投票に参加するのみならず、町長、或いは議員、また職員として町の政治に直接関わったり、住民として各種委員会などで行政の意思決定に関わったりするなど、さまざまな形で政治に関わることが可能であることをわかってほしいのです。単なる受け身の形で「与えられる」ものではなく、自分が主体的に関わるべきものだ、ということを理解してほしいのです。
もう一つは、一宮町は生徒諸君にとって自らの育った大事な町だと思いますが、当事者として、一宮町にどのようなことを期待するか、どのような問題を感じているか、どうしたらもっとよい町になるか、そうしたことを具体的に挙げてもらって、一緒に議論をすることで、実際に当事者的な立場で考える体験をしてほしいということです。
1年生・2年生・3年生の順番で行いましたが、1年生と2年生の時は、教育長はじめ、教育課のスタッフにも発言してもらいました。全員が主人公である、という私の考えからすれば、なるべく多くの人が発言する機会を得るというのが大事だと思うので、スタッフにも話してもらいました。もちろん、生徒諸君にはなるべく多くの方をということで、相当大勢の方を指名して、発言して頂きました。それにしても、日本人の名前は、なかなか読めないことが多くて、間違えてしまいがちです。もちろん、英語圏でも、非英語系の出身地のひとの名前などは、アルファベットで綴られていても、どう読むのかわからないこともよくありますから、日本に限ったことではありませんが…。
1、2年生の生徒諸君の時は、あらかじめ出してくれた質問状に沿って一つずつ議論していったのですが、3年生の諸君のときだけは、ちょっと趣向を変えました。ひとつの問題を展開して、施策にしてゆくまでの模擬的な頭の体操というかたちです。
まず最初に、ある方の町に対する期待を聞くと、「ショッピングセンターがほしい」という意見でした。そこで私は「ショッピングセンターがあると町に何がもたらされるかな」と尋ねました。その後、次々に尋ねて、大体以下のようなやりとりを展開しました。
「人が大勢来ることになる」
「確かに人に大勢来てほしいね、人が来て期待することはなんだろう」
「お金をつかってくれること」
「そうだね、それが町にとってはありがたいね。では、何かこういうショッピング街がよいというモデルがあるかな」
「竹下通りのようなものがいい」
「竹下通りは確かに魅力的な若者の町だね。だけど、一宮にあったとして、どうだろう東京や神奈川の人は、どちらにゆくだろう」
「東京に行くと思います」
「そうだね、一宮は東京から1時間かかるから、東京と同じものだったら、わざわざ来るかどうか。人があまり来てくれないと、続かないね。ではどうすればよいかな、一宮ならではのものでないと人は来てくれないよね。一宮の独自なものとはなんだろう」
「メロンなどどうですか」
「メロンはよいけどどれぐらいの期間あるかな」
「わかりません」「2週間くらいでしょうか」
「そうだね、6月下旬から7月中旬まで3週間ほどだね。それ以外の時はどうすればいい、なにかないかな」
「梨があります」
「梨はいつ頃かな」
「わかりません。」「2か月くらい」
「8月から幸水、9月は豊水、10月も他の品種とかあるけど、最盛期は2か月だね。それ以外はどうですか」
「トマトはどうですか。」
「トマトは、かつて一宮の主力産品で高く売れたけど、今は他にも産地もあり、単価が高くない。だけど一年中あるから、これをベースに据えてゆこう。他にはないかな」
「海があります。」
「海は大事だね。……」
こういう具合で、町を盛り上げてゆくためにはどういう形でプランを練ってゆくのか、ということを念頭に、議論する形にしました。ただ、時間の制約があったので、そのための資金をどう調達するかの方面には話がゆかず、リスク管理の問題も議論できませんでした。しかし、私としては、こうした議論の展開の中に、政策の立案・審議・検証といった作業が行われる、その一端でも感じてもらえればと思ったわけです。2学期・3学期もまた中学生諸君との時間をもちたいと思います。お世話頂いた先生方には、深く感謝いたします。