町長日記 平成28年10月6日(西湘海岸の侵食防止見学)
西湘海岸の侵食防止見学
本日、南九十九里海岸浸食対策協議会というところの主催で、神奈川県大磯町から二宮町・小田原市にかけての海岸浸食対策の見学に出かけました。
この視察はわたくしにとっては大変実りの多いものでした。
第一に、海岸浸食の対策が全く新しいもので、大変興味深かったことです。それは従来のヘッドランドや突堤、或いは離岸堤や護岸といったものと全く違っていて、幅15m×長さ30mの岩盤型の構造物を、砂浜から50センチほど露出するように作って、それによって海岸浸食を食い止めようというものでした。
この岩盤型の構造物は、恐らくコンクリートで作るのだと思いますが、亀の甲羅のようなイメージでしょうか。頂いた資料には、貝殻、或いはかねやすり状の、背が高くなったものが伏せてある図柄で出ていました。
これは、今期待されているところでは、平時は砂に埋まっており、台風などの強波浪時にはその上の砂は流出してしまうものの、岩盤状なので、それ以上の浸食は受けないで浸食を止めることができます。そして、面白いのは、平時には、露出してしまった構造物の上に、再度土砂が積もって、地下に潜ってしまうと考えられていることです。
資料を読んだだけでは「本当に有効なのかな」と首をかしげましたが、担当の方々のお話を伺うと、実地の観察にもとづいて考案され、シミュレーションして検証した結果採用されたものだというのです。
平成19年の台風9号で、大磯二宮付近は強い浸食を受け、西湘バイパスの一部が崩落するまでの甚大な被害を受けるに至りました。この激しい被害を受けて、この地区の浸食防止対策が国直轄事業に採択されたわけですが、その際、一部海岸で砂浜の下に埋もれていた岩盤が露出しているのが発見されたのだそうです。そして、興味深いことに、この露出した岩盤が、その後二か月の間に再度土砂に覆われてしまう経過がはっきりと観察されたというのです。ここからある方がインスピレーションを得て、これを技術として採用できないかということになり、そこからコンピューターでの解析・検証などを経て、本当に有効であろうということで、正式に採用になったという話でした。総額は135億円、まず二基作ってその間で効果を確かめ、結果がよければ大磯港から酒匂川河口まで13キロの間に6基建設するそうです。
なんといっても、現場での観察にもとづいて考案された方法であること、また構造物が平時は砂に埋もれて見えないこと、などにおいて画期的な方法であると思います。これがうまくゆくことを心より願っています。
また、それ以外にも気づいたことがあります。一つは、神奈川県では、現在大規模な松枯れは生じていないということです。江の島から辻堂、茅ケ崎、そして平塚大磯と、ずっと海岸通りを進んでゆきましたが、全く松枯れが生じていなかったのです。私はかつて神奈川県で育ったのですが、1960-70年代に一度松枯れがあったと思います。私が小学生のころ、すなわち1960年代には、江の島から茅ケ崎にかけての海岸には小松が植えてあって、風よけの覆いがめぐらされておりました。そのむこうには海も容易に臨めたように記憶します。いずれにせよ、今その松はかなり大きくなっていますが、全く枯れていないのです。林床には雑木雑草が密生しており、幹にはつたもからまって、状態は決してよいものではありません。しかし、ともかくも松が枯れていないのです。
旧東海道沿いの松の木、或いは民家の松の木に至るまで、元気な松が多く、広範囲にわたる深刻な松枯れで苦しんでいる九十九里浜地域とは大変な違いでした。この原因は何なのか、今後十分に探索する必要があります。現在の段階で推測すると、地盤沈下による地下水位の上昇の有無が、二つの地域を分けるもっとも大きな要因のように思いますが、それ以外にも原因があるのか、しっかりとみきわめる必要があります。
また、大磯から小田原にかけての旧東海道は、その一部において電線が地下に埋設されており、街並みが大変すっきりし、空が広く感じられて気持ちの良い景色が広がっていました。一宮でも、国道沿いの旧商店街、或いは玉前神社前の桜馬場などは、電線の地下埋設を図るのがよいのではないかとのインスピレーションをもらいました。もちろん具体的に形にするとなると問題もあるかもしれないので、慎重に進めるべきでしょうが、一考に値するのではないかと考えました。